イギリスの「厳罰主義」

     (平成15年9月9日初出)

 

 平成15年9月2日付の『朝日新聞』「私の視点」欄に山本聡氏(神奈川工科大学助教授・NPO法人神奈川被害者支援センター専門委員)の「少年犯罪 英国の厳格主義を手本に」が掲載された。その趣旨は「単なる厳罰」ではなくて、保護者の責任を明確にし、更正の可能性を高くする等の総合的な観点が必要だというものである。

 手本にすべきイギリスの制度とは、

1 10歳以上14歳未満の少年の有罪を立証するには、悪意に基づいて犯行をしたことを証明しなければならないとする取り決めの撤廃。これは厳罰化の方向だが、それは単なる厳罰ではなく、その目的は「年齢に応じた責任を少年に自覚させ、償わせることにある」という。

2 親の責任。加害者の親にカウンセリングなどへの参加を義務づける権限を裁判所に与えた。「責任を知らしめ、保護や支援の重要性を再確認させるのが狙いだ」そうだ。

3 少年本人には外出禁止命令や怠学者への指導命令が出され、非行防止の徹底が図られる。

4 専門機関は、罰・償い・リハビリを結びつけ、福祉や教育面からのきめ細かいケアを目指す。

 こうした英国流のやり方は「厳格主義」と呼ばれるそうである。

 大賛成である。少年本人にせよ親にせよ、単純に厳罰に処する(市中引き回しの上、ハリツケにする?)よりは、考えようによってはもっと厳しい処置であり、また当を得た考え方である。こうすれば、予防にも通ずるし、また更正のために有益だから、再犯を防ぐ確率も高くなる。我が国でも早くそうした制度を取り入れていかなければならない。

 ただし、その文章の中に一点、気になる一節がある。

 「日本で少年の犯罪が起きると、社会はともすれば興味本位に走り、原因を探ることに躍起になる。」どうやら、原因を探ることはよくないことか、少なくとも二の次にすべきだという考えがあるらしい。その点だけは賛成しかねる。

 たしかにマスコミの中には興味本位にプライバシーを暴く傾向もある。しかし「原因に対する世間の関心」が高いのは、単なる興味本位ばかりではない。むしろ「犯罪を起こさないようにするには、どこに原因があるかを明らかにしなければならない」という問題意識から、生育歴や家庭環境に関心が集中するのである。その関心はまったく正当だし、またそうした調査から少年犯罪の重要な原因として家庭教育のあり方が決定的に重要だという事実が明らかになっている。

 犯罪少年の更正という観点からは、過去の原因を調べることよりも現在の少年の心理を理解し環境を整えることの方が重要だと考えるのは正当である。しかし予防という観点からは、原因を追及するのは最も大切な手続きである。山本氏は更正という観点に傾きすぎていて、原因究明の大切さを軽視しているように感じられる。

 少年犯罪の原因としてクローズアップされているのが、家庭教育のあり方である。われわれ「民間教育臨調」の「第三部会」(家庭教育部会)では、いま家庭教育のよりよいあり方について叡智を集めて報告書を作成中である。今までにない充実した内容になる見通しなので、これが出たあかつきには、各方面で参考にし、活用してほしいものである。

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