「強制連行」出題

 

センター試験に「強制連行」出題

 

       (平成16年1月20日)

 センター試験に、太平洋戦争(第二次世界大戦)中 に、日本によって朝鮮人が強制連行されたということが出題され(世界史B問 題 p35)、それが「正解」(すなわち歴史的事実)として扱われた! これは 由々しき大問題である。

 その出題とは次の通りである。 

 

1)問5 下線部(4)について述べた文として正しいものを、次の (1)〜(4)のうちから一つ選べ

1.朝鮮総督府が置かれ、初代総督として伊藤博文が赴任した。

2.朝鮮は、日本が明治維新以降、初めて獲得した海外領土であった。

3.日本による併合と同時に、創始改名が実施された。

4.第二次世界大戦中、日本への強制連行が行なわれた。

 

 そして、4 が正解扱いだそうである。

 この出題は二つの意味で重大な疑問がある。

 第一に、「強制連行」という問題については論争に決着がついてい ない。「強制連行」という言葉そのものが不適切だという意見もある。

 ともあれ日韓と日中の現代史は激しい論争の的になっており、入試 の問題にするのを控えるのが良識というものである。

 とくに昨今では、韓国の中にも、日韓の歴史を客観的に見るべきだ という意見や、併合が朝鮮にとってプラス面も多くあったという見方も、若い 研究者から出てきている(もっともそうした本は韓国では事実上の発禁処分で 売ること読むこともできないが)。

 こうした経緯のある、現在係争中の問題を入試に出題し、一方的な 見方を「正解」にするというのは、暴挙と言うべきである。

 第二に、この「強制連行」という言葉は、現時点でとくに政治的な 意味を持たされている。すなわち、いま北朝鮮が「日本が戦時中に何十万とい う強制連行をしたのに比べれば、拉致などものの数ではない」という言い方 で、拉致問題を軽視させようと懸命に宣伝している最中なのである。

 

 拉致問題が国をあげての課題になっている、そのさ中に、わざわ ざ「強制連行」という言葉を使って歴史の問題として出題するとは、明らかに 政治的イデオロギー的意図があるとしか考えられない。

 入試問題の中で政治的イデオロギー的に偏向した出題をしたという 意味では、まさに信じられないような暴挙と言わなければならない。

 この問題は、歴史を客観的に見るという日本人の課題を、改めて浮 き彫りにしたと言うべきであろう。

 

「強制連行」に関する事実

 

      (平成16年1月21日)

 センター試験に出題された「強制連行」に関する事 実について、私も専門でないので詳しくないが、幸い『産経新聞』の本日号に 解説が載っているので、紹介する。たいへん重要な事実に関することなので、 是非読んでいただきたい。

1 「強制連行」と呼ばれている事実は、「国民徴用令」(昭和14年 7月施行)に基づいて、朝鮮半島にも適用されたために、日本に連れてこられた 人々のことを指している。

2 「国民徴用令」が朝鮮半島に適用されたのは、昭和19年9月から 12月までの4カ月間である。これは法律に基づく戦時勤労動員であり、無法な 拉致とは本質的に異なるものである。

3 「国民徴用令」に基づく戦時徴用者はごく少数にすぎない(昭和 34年の外務省による在日朝鮮人に関する調査)。それ以外の内地への渡航は自 由意思によるものであり、主に職を求めて自主的に契約をした上での移動であ った。

4 「強制連行」という表現は、ほとんどすべての高校教科書にあ る。朝鮮統治や和冦を「侵略」と書いている教科書もある。

5 専門家の意見「こうした選択肢が正解として扱われると、受験生 は不正確な理解を刷り込まれてしまう」(上杉千年氏)、「学説で割れている事 象を入試で確定的に扱うのは中立性という点で問題がある」(新田均氏)。

6 この出題を採点からはずすようにとの要求が出ているが、文科省 は「教科書で扱われたことを出題することに問題ない」という見解である。

 

 以上の解説を読むと、「強制連行」という言葉が反日宣伝のために 仕組まれた造語であることが浮き彫りになる。この言葉を確定的な事実である かのように入試で扱うことがいかに問題であるかは明かであろう。しかしもっ と問題なのは、もともとほとんどの教科書で使われ、生徒たちに刷り込まれて いるということである。

 

「強制連行」という用語そのものに問題がある。

 

      (平成16年1月22日)

 本日付の『産経新聞』の「正論」欄に、センター入 試の「強制連行」について、藤岡信勝氏の論説が掲載されている。非常に啓発 的であり、まさしく正論だと思うが、『産経新聞』を取っている人が少ないと 思われるので、その要点を紹介したい。

 藤岡氏が最も強調していることは、「強制連行」という用語そのも のに問題があるということである。すなわち、その定義も定かでないし、意味 も曖昧だということである。その点について藤岡氏はこう述べている。

 

 (センター入試の文中に登場する)「朝鮮総 督府」や「創氏改名」は、当時もその言葉が使われており歴史的事実に属する が、「強制連行」は次元が異なる。「強制連行」は政治的糾弾の機能を担う造 語であって、歴史の事実を指し示す言葉ではない。それは、対象指示機能より は情動喚起機能の優越する、政治的色合いをもった「唸(うな)り言葉」(S・ I・ハヤカワ)なのである。それ故、使う者の政治的目的に応じて、対象指示に 関しては伸縮自在、融通無碍(むげ)となる。

 

 要するに「強制連行」という言葉は、歴史的事実を 示す用語ではなくて、ある曖昧な広がりをもった事実に対して、はじめから価 値観を付与した上で、「強制」とか「連行」といった悪い印象を喚起する言葉 を使い、糾弾する目的で作られた意図的な造語だということである。

 「強制連行」という用語がいかに曖昧で不確かであるかについて、 金英達氏は次のように述べているそうである。

 

 (金英達氏は「強制連行」の)概念規定にか かわる要素として、(1)時期、(2)移動地域、(3)渡航形態、(4)連行方式、 (5)連行目的、(6)適用法令、(7)離職・転職の自由、(8)民族的な差別・虐待、 の八つの次元を列挙している(『金英達著作集2・朝鮮人強制連行の研究』)。

 

 これらのどの要素についても、「強制連行」という 用語の意味は曖昧である。たとえば、「時期」についても、「第一次世界大戦 中」の「徴用」のことなのか、併合後のすべての時期における朝鮮から日本へ の移動のことなのか、はっきり定義されていない。後者の意味にとって、「在 日=強制連行の犠牲者とするイメージも盛んに吹聴されている」そうである。 また海外から連れてきたことを言うのか、国内でも勤労動員されて強制的に移 動させられたことまで含むのかも曖昧である。もし含むのなら、日本国内でも 多数の「強制連行」がなされたと言わなければならない。

 要するにこの言葉は、学問的な定義も明確でなく、歴史的事実とも 合致していない。

 そこで、もし受験生の中に、この「強制連行」という用語そのもの に批判的な者がいたら、この設問を見てとまどいを隠せなかったことであろ う。「正解はない」と考えたはずである。この一事をもってもこの出題が不適 切かつ不公正だということが分かるが、「強制連行」を信じている受験生にも 不利になりうると藤岡氏は述べている。

 すなわち、「強制連行」を日韓併合後のすべての日本への移動だと 理解していた受験生は、「強制連行」を「第一次世界大戦中」に限っている 4番目の項目を「ひっかけ」だと判断し「正解」からはずして考えたかもしれ ない。したがって、藤岡氏はこう結論している。

 

 つまり、どちらの立場からも、この問題は 「正解なし」と判断されるのである。入試問題は立場の如何を問わず万人が認 める知識の範囲に限定されるべきである。

 大学入試センターは、この設問が欠陥問題であることを認め、「正 解なし」として採点から除外する措置を速やかにとるべきである。

 

 まったくそのとおりである。私はこの結論を全面的 に支持したい。文部科学省も「教科書に書いてあることを出題したのだから問 題ない」と官僚的な答えで済ますのでなく、現在係争中の問題を入試に出すこ との不当性を認識すべきである。

 

「強制連行」、記述のない教科書も

 

      (平成16年1月25日)

 「強制連行」についての記述がたとえ教科書にあっ たとしても、「強制連行」について入試に出題すること自体が不適切である が、なんと「強制連行」について記述がない教科書がいくつも見つかったとい う。となると、文科省が言っていた「教科書に記述がある限り問題ない」とい う弁護論は通用しなくなったと言うべきである。

 本日の『産経新聞』によれば、受験生が使用した高校世界史の教科 書のうち10冊に「強制連行」の記述がないことが、「新しい歴史教科書をつく る会」の調査で分かったという。さらに、「強制連行」の記述があっても、第 二次大戦中と特定できないものがBで2冊見つかったそうである。

 文科省は「採択で実際に生徒が使っている教科書で見ると、9割近 い教科書に強制連行の記述がある」として「問題ない」という見解だそうであ る。

 あきれた話である。「9割近い」という数字を信じたとしても、逆 に言えば1割以上の生徒が不利になったということになる。入試というのは、 ある教室で監督官の判断ミスから2、3分時間が少なくなったといって大騒ぎに なる世界である。1割もの受験生に不利になるような出題が「問題ない」と は、あきれてものが言えない強弁と言うべきである。

 それにしても、実質的に9割もの教科書に「強制連行」という言葉 が使われていることの方が、よほど重大な問題である。この出題は、はしなく も日本の歴史教育の巨大な歪みを露呈させてくれた。

 それにしても、『産経新聞』以外の新聞をはじめマスコミはなぜこ の重大な問題を取り上げないのだろうか。

Back to Top Page