警官発砲違法判決、警官の手を縛るな

         (初出 平成16年1月28日)

 1月27日に東京地裁で、きわめて重要な判決が出された。これは治安を本気で考えている者には見過ごすことのできない、重大な疑問判決である。

 訴訟を起こしたのは、窃盗の罪で服役中の中国人男性。警官に背中を撃たれ、歩行不能になったとして、損害賠償を請求したものである。

 この男、ピッキング窃盗団に加わり、路上で職務質問を受けて抵抗し、警官に暴行を加え、逃げようとして背後から撃たれて捕まった。男はピッキングの用具を持っていた。

 この事実に対して、綿引万里子裁判長は、「発砲時点では警察官に危害を加える状況になく、発砲行為は必要な限度を逸脱している」として636万円の支払いを命じた。

 「盗人に追い銭」とはこのことだ。いま問題になっている「国民の常識からかけ離れた裁判官」の典型である。第一線で命をはって犯罪者と戦っている警官の現場の実情を知らない、空理空論と言うべき判決である。「空理空論」というのは、暴漢と体をはって格闘しているときに、「ある瞬間には警官に危害を加える行動、ある瞬間から危害を加えない行動」と、瞬時に切り替えるなどということが不可能だということが分かっていない点である。この女性裁判官は格闘技も経験していないだろうし、もちろん格闘をしたこともないのであろう。

 職務質問をしているときは、相手と至近距離にある。犯人が向かってきた瞬間に拳銃を抜いて撃つ暇がないのが普通である。そのとき撃っていれば「合法」、犯人がひるんだ隙を見て拳銃を抜いて撃ったら、ちょうど後ろを向いて逃げに入ったので背中に当たったら非合法、などという区別が瞬時にできるわけがないのである。

 その間の細かい状況が分からないが、じつはそんなことが問題なのではない。そういう細かいことを言って区別だてをして、背中を撃ったら非合法という判断そのものが間違っていると私は言いたいのである。こんな判決がまかり通っては、警察官は弱腰になるばかりで、犯罪者には逃げられっぱなし、治安は悪化の一途をたどるであろう。

 私はつねづね「職務質問をして、逃げる奴は拳銃で撃っていいことにすべきだ」と主張している。いささか乱暴だと言われそうだが、原理的には正しいと信じている。「逃げる」という行為は、悪いことをしている証拠である。悪人を逃がさないためには、そのくらいの断固とした態度が必要である。「こいつを逃がしてなるものか」という気迫がなくて、警察官は務まらないし、悪人と戦うことなどできはしない。私が警視総監なら、この警官を大いに褒め、表彰しただろう。

 拳銃使用は、単に警官の身を守るためだけではなく、犯人を逃がさないためにもよいことにすべきである。

 今回の裁判の場合、逃げようとした犯人を撃った警官の行動は、百パーセント正しかったと思う。そう考えないと、治安は守れない。私は警察官に対して、「拳銃は躊躇しないで、早めに使う方がよい」とアドバイスしたい。今度の場合も暴力で抵抗された時点で早めに使っていれば、問題なかったのである。

 綿引万里子裁判長は古い人権観念からだろうか、ことさらに警官の手を縛るという意識から抜け出ていない。こんな裁判官がいるあいだは、日本の治安は改善されないだろう。警察庁は断固として控訴すべきである。

 (後に高裁で逆転判決が出された。)

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