解説(2) 中国の軍事優先・覇権主義の必然性

      (初出 平成17年4月16日)

 共産党支配の国は必ず軍事的支配・覇権主義(=軍国主義)になる。その理由は二つある。

 一つは革命・権力奪取が軍隊によってなされるからである。ロシア革命は軍隊の反乱・寝返りによって成功し、内乱に勝つことで成就した。中国革命は「銃口から生まれた」と言われるように、毛沢東がスターリン=コミンテルンの指導(都市部での労働者の蜂起を重視した)に反逆し、農民中心の「解放軍」を育てることによって成功した。

 軍隊の比重が大きいから、軍隊の発言権も大きくなる。軍事的視点からの政策決定が優先されるようになる。

 第二は、経済が必ず失敗するから(人間を強制して働かせる非効率、創意工夫・自発性の喪失)、資本主義諸国との競争の中で経済では太刀打ちできないので、軍事力によって対抗しなければならないからである。

 しかしその負担(軍事費増大)のためにますます経済が圧迫され、経済が破綻するという悪循環に陥る。共産党政権がかかえる必然的なジレンマである。

 軍事的な観点が強まると、外国に対して「軍事的に勝つ」ことが優先される。「勝てる」戦略が要求される。とくに軍事的要衝に対するどん欲な征服欲を特徴としている。その要衝が国外にある場合には、その地を獲得するために、外に向かって侵略的にならざるをえない。

 典型的な例がソ連にとってのアフガニスタンと、中国にとってのチベットである。

 アフガニスタンは中近東の石油地帯を睨む要衝である上に、海への出口であり、ソ連にとって世界覇権を狙える最大の要衝である。ここに傀儡政権を作ったが、それが崩壊しそうになったので、軍事的に征服しようとして、アメリカと衝突し、戦争になった。

 チベットは中国にとって、東南アジアを睨む地理的な最大の要衝である。ここに核ミサイル基地を作ることは、中国のアジア覇権にとって必要不可欠なのである。そこで「もともと中国の領土だ」として軍事的に占領し(革命政権樹立の早くも2年後に進駐)、抵抗するチベット人を弾圧・殺傷・投獄し(10万人近いチベット人が殺されたと言われる)、亡命者は40万人と言われる。(チベットの人口は600万人、約一割が「チベットから消えた」ことになる。ちなみに占領以来新たに移住してきた中国人は750万人と言われる。)

 マルクス主義は「民族自決」の原則を掲げていたはずだが、ソ連も共産中国も少数民族の独立を認めたことはない。武力で併合し、支配してきた。

 チベットでは武力併合以後、独立を目指す蜂起がしばしば起こり、ついに1989年には中国政府は戒厳令を出した。このときチベット自治区党委員会書記として無慈悲な「暴動」(じつは独立蜂起)鎮圧を指揮し、党中央政治局員に抜擢されたのが今の胡錦濤総書記である。あの穏やかそうな温顔の下には、そういう冷酷無比な本質が隠されているのである。

 一方、台湾が海運にとって最重要な要衝であることは誰にも分かる。中国がチベットも台湾も「不可分の中国領土」だと主張する裏には、軍事的覇権を目指すという中国の本質が隠されているのである。

 一時、中国海軍の軍艦が日本周辺の海図を作るためにしばしば日本海域に出没していたのも、中国の原子力潜水艦の日本領土侵犯も、いざというときに原子力潜水艦でアメリカの航空母艦を牽制する狙いがある。

 今回、中国で反日デモが荒れた4月9日の前日には、じつはチベット亡命政府のダライ・ラマ法王が来日したのである。台湾の李登輝氏の来日にも必死になって反対した中国のこと、9日の反日デモが偶然の一致であるはずがないのである。日本がチベット独立を応援することに対する暗黙の警告だろう。

 中国はヴェトナムに侵攻して戦争をしかけたり、南シナ海の諸島(中国名・南沙諸島・西沙諸島)の領有権をめぐってヴェトナム、フィリピン、マレーシア等の周囲の国々と対立している。最近では尖閣諸島(中国名・釣魚島)や東シナ海ガス田開発をめぐって日本と対立している。あらゆるところで軍事的・外交的に対立して、アジアの平和をおびやかし、脅威となっているのは中国である。

 軍事的観点が優先し、軍事的膨張志向の強いことが、共産主義国家の宿命である(北朝鮮の先軍思想が好例)。核兵器を持ち、軍拡に精を出し、軍事的膨張を続けている中国こそが、アジアひいては世界の平和を脅かしているのである。日本が平和を脅かしているなどというのは、まるで逆さまであり、暴言だと言うべきである。

 中国が「歴史問題」を持ち出すのは、日本国内の左翼分子を煽動して政府と対立させ、日本政府の動きを牽制するためである。つまり安保理に日本が入るというような政治・外交面での日本の比重の増大(とくにアジアでの)を阻止しようというのが、中国の基本戦略なのである。今回の官製デモのスローガンに「日本の常任安保理入り反対」が多かったことが、すべてを物語っている。その意味では、日本の対中国戦略にとって最大の阻害要因は日本の左翼勢力の中国への協賛と呼応である。この第五列を克服するのが日本にとって最大の課題と言える。

 日本はこうした中国の覇権主義を十分に認識した上で、あらゆる機会を使って、中国の覇権主義の危険を訴え、中国を外交的に孤立させていく戦略を取るべきである。


 (平成17年7月21日加筆)

 報道によれば、米国防省は19日、中国の軍事力に関する年次報告書を公表した。それによると、中国政府は2005年の軍事費を299億ドルと公表しているが、実際はその2〜3倍の900億ドル(約10兆円)と推計されるそうである。

 中国の軍事費増大は17年続けて二桁の増加率である。とくに空海軍力の増強と近代化を重視し、弾道ミサイルや潜水艦を急速に増強している。弾道ミサイルは台湾を越えて日本どころかアメリカをも射程に入れることができるそうである。周辺国との紛争に軍事力を使うつもりがないのならば、そんなに強大な軍事力を持つはずがないのである。中国は明らかに軍国主義への道を歩んでいる。

 このところ中国軍人の突出した発言が目立つ。中国は伝統的に、軍に対する党のコントロールを重視し、軍には各レベルで政治委員を置き、党の支配を確保してきた。しかし最近はそのコントロールがきかなくなり、アメリカの都市を核兵器で攻撃できると威嚇するような軍高官の発言も飛び出した。

 アメリカに対するあからさまな軍拡競争を始めた中国に対して、日本の「平和」勢力は何も批判しないのか、どんな詭弁で弁護するのか興味深い。「アメリカに対抗する勢力が出てくる方が結構だ」とでも言うのだろうか。それとも「緊張を強め戦争の可能性を大きくする暴挙」だと批判するのだろうか。

 。

 。

Back to Top Page