父性

17 好著推薦 小浜逸郎『「男」という不安』PHP新書、2001年4月

 女性論はすこぶる盛んで巷にあふれている。たまに見かける男性論は女が書いている。まれに男が書いているなと思うと、「男らしさを捨てよ」などと、「男であること」を否定するものばかりである。

 「男であること」「男になること」はそんなに否定しなければならないことなのか。

 ちょっと待ってくれ、と著者は言う。例えば自殺の七割が男だとか、凶悪犯はみな男だという事実に、何か意味はないのだろうか。

 重大な意味がある、というのが著者の見方である。それらは「大人の男になること」に失敗した例ではないのか。

 男が「男になる」ことは生物学的にも心理学的にもおそろしく難しいことなのだ。

 ところが昨今は、男だけを特別に論じてはいけない(女については特別に論ずるくせに)と言われるので、男児を「男」にするためにどこをどう気をつけて育てるべきか、どこをどう鍛えるべきか、という方法論を研究する必要さえ否定されかねない。昔から「男の子は育てにくい」と言われているのに。

 著者はこのないがしろにされてきた大切な問題に、勇敢にも真正面から取り組み、「男であることの困難さ」について、思春期や中年期に焦点を絞って考察していく。

 第1章 「男らしさ」は必要なくなったか

 第2章 いつ「男」になるのか

 第3章 男にとって恋とは何か

 第4章 「中年」と「父親」をどう乗り切るか

 この目次を見ただけで予想されるように、内容は豊富で、話題は多岐にわたり、多くの有益な提言も織りこまれている。

 自分の子育ての体験も交え、また自分のダメなところもさらけ出しながら、「男の条件」をさまざまな角度から探っている。

「男なら読んでみな」と言いたくなる、男性必読の好著である。

(『産経新聞』2001年5月20日掲載)