フェミニズム批判

 

6 自著自薦

 

 (1)『主婦の復権』講談社、平成10年(1998年)4月刊

       

特徴

 フェミニズムによって不当に貶められている専業主婦の価値を、歴史的な視点から、また子どもや家族に対する影響という観点から評価し直した本。

 フェミニストは「価値の多様化」とか「多様な家族」と「多様性」を主張するのに、なぜ専業主婦という形態だけは認めないのか。その問題を追求していくと、そこからフェミニズムの本質が見えてくる。日本初の本格的なフェミニズム批判の書でもある。

 

注目点

1 フェミニズムの本質を「働け」イデオロギーと規定し、そのイデオロギーの欺瞞性を暴露している点(第2章)。

2 フェミニズムを「社会主義」フェミニズム、近代的フェミニズム、ラディカル・フェミニズムなどに分類し、各派に共通の誤りをえぐり出している点(第3章)。

3 母性本能とは何かを学問的に明らかにした点(第4章)。

4 フェミニズムのバイブルのごとくに誰もが依拠する「母性本能否定」の書バダンテール『母性という神話』の方法論的欠陥を徹底的に明らかにした点(第4章「母性本能は神話か」)。

5 母性神話説の代表者・大日向雅美氏の母性研究の決定的な欠陥を明らかにした点(第4章「母性とは何か」の冒頭)。

 

「はじめに」再録

 女性が職業につくことも、専業主婦でいることも、それが主体的選択であるかぎり、私はどちらにも同じ価値を認める。

 ではなぜ「主婦の復権」かというと、主婦の価値がいま不当に貶められているからである。「復権」とは落とされた価値を再び高めることである。なくなったものを復活させよという意味ではない。

 私は主婦という形態は、歴史的に見て、女性自身にとっても、他の家族にとっても、最も人間的で進歩的な形態だと評価している。ただし主婦ならばすべてよしと言うのではない。主婦にも「美しい主婦」と「醜い主婦」とがある。「美しい主婦」とは精神的に自立し、優しい心と母性をもって子どもを育て、家族を愛し、家族の命と健康を守り、家庭をまとめている主婦である。ここに言う「主婦の復権」とは「美しい主婦の復権」である。

 主婦の価値はもともと夫である男性によって低められる傾向にあった。そのうえ最近ではフェミニズムによっても徹底的に貶められている。主婦の価値は二重に落とされている。

 その結果、主婦たちの中には自信を失い生きがいを失って、「醜い主婦」になり下がっている者も少なくない。

 主婦たちを醜くしているものの正体は、主婦を評価しない男性たちと、主婦を貶めるフェミニズムである。夫から蔑視されて主婦としての自信を失い、女性としてどう生きたらいいのかを求めて「女性の生き方」についての各種の講演会やセミナーに出席すると、その講師はほとんど百パーセントがフェミニストの女性である。そこで再び主婦たちは主婦であることを否定される。男性の蔑視から逃れようとすると、再び同性から否定される。主婦は二重に否定されている。

 フェミニストたちはあらゆる場で主婦を徹底的に否定し、軽蔑している。しかしいつのまにかフェミニズムは行政、ジャーナリズム、学問の中に広範に浸透し、大きな影響力をもって「世の風潮」「時代精神」になりつつある。とくにフェミニズムに関心を持たず、その指導者や理論家の名前を知らない女性たちでも、どこかでその思想の影響を受けていて、いつのまにか主婦が価値のない存在だと思いこまされている。

 なんとそうした構造の中で、フェミニズムは男性たちの主婦蔑視をも支える結果になっているのだ。男性たちはことさらに理論化したりはしないが、フェミニストたちは主婦蔑視の根拠をあれこれと理論化している。従って主婦の復権を図るためには、必然的にフェミニズムの誤った理論を批判しなければならない。この理由から、本書ではフェミニズムに対する批判に多くのページをさかざるをえなかった。

 フェミニズムは「錦の御旗」を掲げた官軍のごとく、誰もこれを真正面から全面的に批判する者がなく、そのためもあって、あまりにも愚かな間違いを数多く犯している。それを放置しては日本のためにならない。家庭が崩壊しかねない。子供の心と幸せが破壊されてしまう。こういう差し迫った思いから、私は本書でフェミニズムを正面から批判した。

 それはフェミニズムを敵と見るからではない。「主婦の復権」を妨げているのは、あれこれの理論ではなく、主婦の心のあり方そのものである。しかし心の迷いから脱却するためには、惑わしている間違った思想を批判しなければならない。私は主婦たちがフェミニズムの誤りを認識し、自らの価値に自信をもち、主体的に生きる道を選んでほしいからこそ、フェミニズムの批判をしたのである。

 「主婦の復権」は、主婦が主体的に生きるとはどういうことかを考えるようになるという、主婦自身の態度いかんにかかっている。

 女性と男性とが平等に協力して、よい家庭を作ることが、よい社会を築く基盤である。その中で父親がどうあるべきかを考えたのが拙著『父性の復権』(中公新書)であった。

 一家の主婦としての母親がどうあるべきかを考えるのが本書である。健全な家庭を築くための中心としての主婦の価値をもう一度見直そうというのが、『主婦の復権』の趣旨である。家庭が崩壊の危機にさらされている今、家庭の中心としての「主婦の復権」が焦眉の急であると言わざるをえない。よい家庭のあり方について真剣に考えている人に読んでいただきたい。

 

 

目 次


序章 自信を失った主婦たち


責められ悩む主婦たち

主婦を苦しめる三重の構造

いい加減なフェミニズム理論

「おかあさん」がいなくなる!

「する母」と「いる母」

母性不足の子供の症状

能面のような表情

心理療法では治らない「癒し」のきかない子供たち

「働け」イデオロギーの圧迫

母性本能の否定

主婦の復権を

アメリカでは反省が始まっている

 

第一章 美しい主婦たち、醜い主婦たち


美しい主婦たち

時間の余裕と心のゆとりが可能にする美

愛情をかけて子供を育てている主婦たち

自分で育てる自信がないからと子供を捨てたルソー

家族の命と健康を守り、地球とその環境を守っている主婦たち

「いろいろあります。終わり」という教育は間違っている

暖かい、ゆとりのある家庭を持とうとしている主婦たち

家事を上手に楽しんでやっている主婦たち

家の外での有意義な活動に参加する主婦たち

豊かな教養と趣味を身につけようとしている主婦たち

家族愛の中心になっている主婦たち

 

醜い主婦たち

不自然に若く見せることばかり考えている主婦たち

家事をサボってテレビばかり見ている主婦たち

やたら外出し遊びあるく主婦たち

公共の場でバカ騒ぎし、傍若無人に振る舞う主婦たち

自分で料理を作らないで、出来合のお総菜ばかり食卓に出す主婦たち

テレクラ、不倫に走る主婦たち

夫の悪口を言う主婦たち

男女同権とは醜い男を真似ることか?

主婦を醜くしているのは何か

 

第二章 「働け」イデオロギーの欺瞞性


「働け」イデオロギーのごまかし言葉

主婦を貶める軽蔑言葉

「自立」とは個人個人が砂のようにバラバラになることではない

「たかだか二百年」

自分を正当化する美しいごまかし言葉

夫が死んだとき困るから?

泣き叫ぶ子供を預けて音楽を聴く

「しなやかに生きる」とは「どれもいい加減」ということ

女性が自分で決定したことなら何でも正しいのか?

 

「働け」イデオロギーの心理分析 

横暴な父や夫への反発

売り言葉に買い言葉

夫も妻も「金銭」第一主義

個別的な解決方法の問題点

男性のコンプレックス

家事が嫌いな女性

男女双方にコンプレックスが

男性と張り合う心理

幸せな者へのジェラシー

「女の都合」という言い方

「女らしさ」コンプレックス

「ロゴス型女性」の心理

「愛情」という観点の不在

世の中全体が仕事至上主義でよいのか?

   

「働け」イデオロギーの功罪

「働け」イデオロギーの功績

排除の論理

わがまま、利己主義、詭弁

モラル、マナーの放棄

「がさつ解禁」!?

日本文化の否定、日本的美意識の否定

数の論理は安易で危険な戦略

「働け」イデオロギーこそ男性的価値観

雇用条件の悪化

 

第三章 主婦をどう評価するか


主婦はいかにして成立したか

近代の産物

父権主義的な主婦理解

 

フェミニズムの主婦評価

家事の共同化

育児の社会化の疑問点

集団保育と個の原理

男女同型論と「個の自立」

「個の自立」とは何か

家族愛と母性が悪い?

近代のプラス面

愛情は単なるイデオロギーか

愛と母性は進歩的要素

二重に抑圧される存在?

机上の空論

歴史的見方の欠如

フェミニズム各派に共通の誤り

「性別役割分担」否定という共通項

家族は権力機構か

「働け」イデオロギーは近代思想

 

歴史的に最も進んだ形態としての主婦

愛情が成り立たせる主婦

求められている家族愛と母性

愛情には余裕が必要

進歩的な要素を評価せよ

 

四章 「作られた母性神話」という神話


母性本能は神話か

「母性を持っていなくてもよい」と言うフェミニストたち

どうしたら母性を持てるようになるかという視点の欠落

本能行動とは何か

本能と学習は排除しあう関係ではない

バダンテール『母性という神話』の方法論的間違い

「子供を嫌う文化」

 

「作られた神話」という発想の誤りと危険

「神話」が「作られる」とはどういうことか

「三歳児神話」という神話

幼児期には母性が大切という意味

新しい神話を作るフェミニストたち

 

母性本能否定の心理と病理

「子供だけ」に「埋没したくない」という心理

近代理性主義の本能蔑視

本能蔑視と「実存的不安」

「母=大地」への攻撃

「母性本能」対「文化・学習」という対立図式

主婦否定と母性否定は同根

「主婦よ『幸せ』になるな」の心理操作と思い上がり

 

母性とは何か

母性意識と母性との違い

本能行動と元型的イメージ

母性本能と愛情

母性シンボルの普遍性

母性のマイナス面

母性発現を促進する、および妨害する条件

母性欠損の歴史的背景

母性不足の病理

母性不足の症例

 

第五章 主婦の復権のために


「復権」の意味

主婦をもっと優遇せよ

すべて半分の権利がある

主婦よ家庭に帰れ

男性も家庭に帰れ

母性と父性の区別を否定する人々について

「ましな」フェミニストへ