フェミニズム

 

24 少子化対策=保育所強化策の大愚策

   ──家庭育児の支援こそ本道

        (平成15年6月9日初出)

 

 本年4月に「青少年の育成に関する有識者懇談会」が報告書を発表した。今の私には、その内容全般について分析している暇がないが、全体としてこの報告書がきわめて偏向した内容であることだけは指摘しておきたい。立場は決して中立ではなく、フェミニズムのイデオロギーに偏っているし、決して実証的でも学問的でもない。

 とくに、その「補論 : 乳幼児の母親の就労の是非」が大きな問題をはらんでいることを指摘しておきたい。いかにも「実証的」な研究を基にしているように見せかけているが、それらの「実証的」研究の方法論的な吟味をしないまま、結論だけを示している。

 たとえば、ボウルビーが「早期発達においては、母親が一貫して養育に当たるべきであり、母親との分離は最小限にすべき」と主張した。「しかし、その後の多くの実証的研究の結果、母親の就労の有無によって子の愛着関係の発達にそれほど大きな差異はみられないことが明らかに」なったと結論している。

 この懇談会の委員の一人である網野武博氏の研究というのが根拠になっていて、それによると、国外文献94のうち、保育が子供の発達にプラスの影響を持つという分析が16点、マイナスの影響を持つという分析が7点、残りの71点は有意な差は出ていないというものだという。

 また国内文献では、39点のうち、保育が子供の発達にプラスの影響を持つという分析が2点、マイナスの影響を持つという分析はなく、残り37点はどちらともいえないというものであったという。

 とくに、以前に私が方法論に根本的に問題があると批判した(本HP「母性とフェミニズム」13)菅原レポートを「規模・期間とも最大」と持ち上げて「三歳未満の母親の就労が児童期の問題行動や親子関係の良好さとは関連しないことが明らかとなった」と述べている。

 

 この結論をふまえて、報告書は次のように結論している。

 「調査結果から分かることは、子どもの成長は、母親のかかわり方、保育サービスの質などによって大きく異なり、母親の就労の有無というような単一の要件だけで左右されるものではないということである。」

 ごく常識的で妥当な結論である。しかし、じつは「母親のかかわり方」は「母親の就労」と密接に関係している。端的に言えば、母親が就労していれば、確実に母親のかかわりは少なくなる。就労時間によっては保育の時間が増える。いくら保育の質がよくても、母とのかかわりがなくなっては、保育の質どころの話ではないのだ。

 だいいち、「実証的」と称する研究のほとんどは、方法論的にきわめて杜撰である。事実、私が方法論的に吟味したように、国内最大規模と称する菅原氏を中心とした調査には、重大な方法論的欠陥がいくつも発見された。

 無理に「保育所に問題なし」したがって「母親の就労は影響なし」と結論することによって、乳幼児の母親たちを仕事に駆り立てるのは何のためか。企業の「若くて(元気で)安い労働力の確保」という要請に応えるためとしか考えられない。

 そういう方針によって、確実に家庭での親子関係、とくに母子関係は壊されていく。子供は保育所でスポイルされ、家に帰っても親とは一時間またはゼロ時間しか接触できない。こういう状態で、どうして「母親の就労が子の成長に関係ない」という結論が出てくるのか。欺瞞的調査と言うしかない。学問を党派的主張の道具に使うのを、曲学阿世の徒と言う。

 この委員の中に多くの曲学阿世の徒がいるのだろう。委員の名簿を見ると、座長の本田和子(お茶の水女子大学学長)以下、私が方法論に問題ありとして批判したことのある落合恵美子(京都大学大学院文学研究科助教授)(本HPの「家庭」1-2)、広田照幸(東京大学大学院教育学研究科助教授)(本HPの「時事評論」11,「母性とフェミニズム」9)といった名前も見られる。

 委員の選び方からしてイデオロギー的・党派的に偏っているのではないかという疑惑を感じざるをえない。委員の多くがフェミニストかフェミニストのシンパであり、根拠にしている研究を行った圧倒的多数もフェミニストである。それらの研究はまさに「フェミニストのためのフェミニストによる研究」なのである。

 内閣府は以前にも、夫婦別姓問題でインチキ調査をして、数字の操作で結論を反対にしてしまった前科がある(本HPの「母性とフェミニズム」16、21,22)。

 公正中立であるべき政府の機関が委員の選び方からして党派的であったり、「実証的」だという錦の御旗を使ってエセ研究を称揚するようでは、良心的学者はますます「反政府」にならざるをえなくなる。

 

 以下は、私のところに寄せられたe-mailの一つである。保育園に関しては、預ける側からも預かる側からも問題点を指摘する多くのメールが寄せられてくるが、以下は今どきの平均的保育所の「現実」を明らかにしてくれているので、とくと味わっていただきたい。

 

 娘も4歳になり、一歳のころ一時お世話になった認可保育園に再びこの春から通っています。

 専業主婦ですが、保育園が空いていたのと、ある会社の代理店契約をしているため「自営業」として申請が通りました。

 なじみの保育園がいいという娘の希望もありました。幼稚園だと幼稚園バスに乗せなければならないのが私としても嫌でした。

 徒歩5分の保育園に、親子で手をつなぎ、のんびり通える幸せを感じていました。

 通い始めて2ヶ月、問題が見えてきました。

 簡単に人をたたく。謝らない。あいさつもできない。「どっかに行って、死んでください」と言う(5歳、女の子)。

 こんなことが日常茶飯事に繰り返されます。

 何より困るのが、先生が叱らないことです。

「たたかれます」と話すと、「気をつけて見ていく」と言われるだけで一向におさまらず、埒があきません。

 繰り返されると鬱陶しいので「お母さんに連絡してほしい」と言った時点で、はじめて、まずたたく子の気持ちを探ります。「何か理由があるはず」と。

 たたく子に気を遣い、たたかれる子は放ったらかし。陳情を重ねると園長先生に「あざになったの?」「怪我をしたの?」「日に何回たたかれるの?」と逆に聞かれる始末。

 あざにならない程度は、問題にもされないということです。目に見える形になってようやく問題にするのです。

 私自身、2度園児にたたれたことがあり、2度目にたまりかねてその場で叱ったことがあります。間の悪い事に、口がきけない発達に遅れのある子供さんでした。

 知らずに「ごめんなさいって言いなさい!」と迫り、先生に泣いて抗議されました。私のほうが謝ったのですが・・・。

 ただ誤解を恐れず敢て言うなら、その子供と他の子供の区別がつかないくらい、みな乱暴で粗野です。先生から見れば、みな腕白でかわいい子かもしれません。

 娘はそれでも元気に通い、今のところは熱も出さず、いろいろあっても「楽しい」と言います。楽しかったこと、嫌だったこと何でも話します。

ただ、以前はたたかれると、たたかれた子に抗議したらしいのですが、最近は「もう、めんどくさくなった」と言います。

 先生にも言わなくなりました。先生は「困ったことはいつでも言ってね、と言ってます」といわれますが、結局、先生に言っても埒があかないことは子供だって分かるのでしょう。

 主人に言うと「そんなやつは殴ってやるのがいちばん!」と言ってお終い。男親ってそんなものでしょうか?

 大人に期待しないしらけた子(多いです)になっても困るので、先生が動かないのなら私が出るしかありません。熱くなる私に娘は「ヒーローみたい!」と言いました。

他のお母さん達は似たような不満は持っていても、言わないです。忙しいし、たたくのはお互い様だそうですが。

でも、娘はたたかれてもたたき返しません。文句は言ってもたたきません。「一回たたいてみたら?」と言ってもたたきません。それがあるべき姿だと逆に教えられました。

 働くお母さんの子供が集まる保育園を選んだのだから、覚悟はしていたものの、どうも釈然としない毎日です。

 

 最後に愛子様の育て方について、皇太子様と雅子様がおっしゃっているお言葉を紹介する(YOMIURI ON-LINEより)。

 

皇太子様

子育ての方法としては、できるだけ私も育児に参加したいと思ってきましたし、今後もそうしたいと考えています。これからは父親の役割、母親の役割というものも自ずと分かれてくるでしょうから、母親と子供とのコミュニケーションも父親の立場から大切にしていきたいですね。

 

雅子様

今の時点で、公務ももちろん大切に考えていますが、子供にとって、人生の最初の何年間はとても大切な時期とも聞きますので、愛子の成長を見守り、助けていく育児も、親として大切にしていきたいと考えています。

 

 すばらしいお考えだが、愛子様を立派にお育てすることは最も大切な公務の一つではないだろうか。政府や宮内庁は他の公務を少なくして、皇太子ご夫妻がお子様とできるだけ一緒にいられるように配慮をしてほしい。

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